3.252023
桜の便りが届く。生まれ育った故郷の桜の写真がLINEにのって運ばれてくる。親戚から友達からのたくさんの写真である。昔道路拡張工事で全く勢いがなくなってしまったこの桜は、その後みんなの協力もあって見事に復活と言いたいところだが、いかんせん小さくなってしまった。当時の面影は残すものの半分、いやいや3分の1、いやもっと小さくなっているかもしれない。エドヒガン桜、樹齢400年という。あれからまた何十年と歳月は流れたから450年としてこう。実家のすぐ前のお寺の桜である。春の写生大会といえば必ずこの桜を描いた。いつもピンク色を使ったのを覚えているが、今は白い。やはり弱っているのだろう。子供の頃の思い出はこの桜が全てを知っている。両親、祖父母、近所の人たちみんなの顔が浮かんでくる。どの顔も満面の笑みである。このお寺が集落の中心で、事あるごとにこの桜の下に人々は集い、喜びも悲しみも全てを共有した。私はこの桜の花びらの大きさ、形、色、香りまで鮮明に覚えている。花が終わり、新緑となりそして夏が来る。桜の前の杉の木にはアブラゼミが、またクマゼミはこの桜の木の高いところにしかいなかった。タモを持ち枝を登っていくが取れたためしがなかった。その太い懐かしい枝も今はもうない。一年中の思い出が浮かんでくるが今日はこの桜の花だけを頭に浮かべて一日を過ごそう。
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